読み物「レポート」
レポート

能「橋弁慶」@あじさい能(2015年6月27日開催)

謡のお稽古ではおなじみのこの曲、とうとう拝見できました!
感想を端的に申しますと「胸が熱くなった…!」です。
上演時間も約50分でとても見やすい能でした♪ぜひまた拝見したいです!

(会場)湊川神社 神能殿

行ってきましたのは能楽協会神戸支部主催の「あじさい能」。
会場は神戸の湊川神社神能殿です。こちらは近年改装されたそうでとてもキレイ!イスもふかふか♪

あじさい能の番組(プログラム)は能「橋弁慶」/狂言「神鳴」/能「吉野静」/仕舞3番/能「鵜飼」。お昼12時開始で休憩が2回(20分+15分)、終演は16時半頃でした。
これで一般前売り3,500円は破格…!

能「船弁慶」

  • 上演する流派により演出その他、このまとめの内容から変わることがあります。
  • 「半能」という形式(曲の前半を省略し、後半からスタート)の場合は弁慶と義経が出会う場面からとなります。
    ※「半能」の場合はかならず番組(プログラム)に「半能」と明記されていますのでご安心を!

1. 弁慶と従者の会話

最初に弁慶と従者が登場し謎の少年に関する会話があります。

従者はこんな風な立ち姿。
これは太刀を持つときの基本の構えのひとつで、私はこれが大好きなのですがキープするのは腕がかなり辛いらしいです…。

2. 都の者による会話

その噂の少年、牛若が登場する前に狂言方のお二人によるコント!が入ります。

内容は、片方の男が条大橋を通ったらなんかすごいのに会ったよ!オレ、そいつに斬られたかもガクブル…!」というものでした。

このイラスト、手のところに赤で○印がしてあるのは、今回拝見した狂言の流派の基本の立ち方の際に指はきちんと揃える(左の人)のですが、動揺した場合(右の人)にはおもいっきり指が開くんだ…!という発見をした図を流用したためです。

ガクブルな男のガクブルぶりは、表情もさることながら、

腰が抜けて立てない

立ってもすぐにズッダァァアァン!!!!スダズダズッダァァァァアアン!!!

能楽堂とは思えない武道場さながらの音が響き渡っていました。ドリフもビックリです!

この場面ですが、上記の通り二人コント形式になる場合と、一人で事の仔細を語る場合があるそうです。

3. 五条大橋の戦い

細部は省略しますが、五条大橋の戦いで私が萌えたーー!!!という場面をいくつかイラストつきでご紹介します。

①五条大橋での遭遇シーン

能「橋弁慶」:五条大橋での遭遇シーン


弁慶と義経の登場時の各刀剣の対照的な扱い~!特に牛若が可愛いです。

そうそう、戦闘に入る前に牛若が弁慶の長刀の柄を蹴り上げて挑発するシーンがあります!
能で何かしら道具類を足で蹴ったりどかすという場面はほぼ無いに等しいのではないでしょうか。そういう意味ではこれって貴重です。

②冷静に長刀をつかんで刀でバーン!

能「橋弁慶」:冷静に長刀をつかんで刀でバーン

牛若の見せた超人的描写!私はワキ正面から見たのですが、まさにこの角度で見えました♪
「橋弁慶」は正面からも脇正面からもかなり楽しめると思います。脇正面の橋がかり付近だと弁慶登場が間近に見えますよ。

③武器がなければ素手で…!

牛若に武器をバーン!されてしまった弁慶の行動が可愛すぎます!!!!

④刀が心の動きを表す!!!!

弁慶コテンパン後のシーン。牛若の刀の扱いがイケメン過ぎて…!

弁慶が平伏する(土下座っぽい型)をするのと同時に鞘に納めるところなど「私もお仕えいたします…!」と乱入したい気持ちになりました。

⑤史実を知っているから…。

戦闘が終わり、最後の場面。みなさまご存知かと思いますが、この二人は牛若の兄・源頼朝に追われ非業の死を遂げます。
その《終わり》への始まりの曲がこのような場面で終わるとは知らなくて…。

「主君」とは、「忠義」とは。

義経(牛若)と弁慶の二人が登場する能は「橋弁慶」「正尊」「船弁慶」「安宅」…「橋弁慶」を除いてはどれも頼朝から追われるようになってからのお話です。二人で大活躍の最盛期を描いた能、私は知りません。この意味。。。

さいごに

以上で能「橋弁慶」レポート完結です。
あ!上演時間は約50分ととても見やすい曲ですよ♪審神者のみなさま、そしてまだご覧になったことのないという能楽ファンのみなさま、心から能「橋弁慶」をおススメいたします☆

この日の牛若(義経)役は、先日の江崎欽次朗様襲名披露能「安宅」で義経をされた子と同じ(吉井紹智くん)。
また、会場も同じく湊川神社神能殿!
シテは弁慶ですが、子方とのダブル主役のような印象でしょうか。
それだけ子方をされた子が謡や刀の扱いがしっかりされていたと言えますよね♪
前場~五条大橋の戦いは常に動きがあり(お二人のアイの熱演もすごかったです…!)、ぼんやりする間が全く無く、やや興奮気味に舞台に食い入っていました。

けれど、最後に弁慶が牛若に衣を掛けたところでいきなり涙腺が崩壊しそうになり。。。
能「安宅」で弁慶が必死に義経を守ろうとしたあの忠義の想いが胸にこみ上げてきてきちゃったんです。
この忠義の想いの始まりが。そして《悲しい終わり》の始まりがここだったんだなぁって。