※2021年ウェブサイトリニューアルに伴い加筆・修正を行いました。※
はじめに
初めての能楽堂、未知の空間へ行くのにはちょっと勇気が要りますよね。
私も、もしいきなり「オペラを見に行ってこい!」「歌舞伎を見に行こう!」などと言われたら
(|||・■・)<<えーっ!って確実になります…。
まず心配なのは「何着てくの?」かな…。
そういう訳でみなさまの不安が少しでも解消するように、ワタクシkyoranの個人的な経験をふまえてちょっとしたガイドを書かせて頂きたいと思います♪
チケット、どうやって買う?
以前は能楽堂やその他の会場(一般のホールなどでも開催される事も多々あります)で申し込んだり、出演される能楽師の方から直接購入したりがお決まりパターンでした。
でも、近年はより広く・手軽に能楽を見に来ていただけるようにと
Webやコンビニで申込・購入ができる公演が増えています♪
公演のチラシや詳細Webページにチケットの購入方法が明記されていますのでチェックしてみて下さいね♪
もちろん当日券が販売されている公演も多いので、いきなり会場へ行き受付で支払・入場というパターンもあります。ただ、当日券が出ない公演もありますので、事前に主催団体へ確認したりインターネットで情報をチェックしておくと安心です。
「入れたら見ようかな~」とフラリと能楽堂へ行っていた学生の頃を思い出します。
特に学生さん!学生料金の設定がある公演は破格のお値段ですから一度は能楽鑑賞してみてください♪
どの席に座る?(座席選び)
「正面」「脇正面」「中正面」って何よ?!
チケット料金のところに「正面」「脇正面」「中正面」と書かれている場合があります。これは能楽堂の座席のゾーンを表す言葉です。
本当にザッと書きましたが左の図をご覧下さいませ。
実は能舞台上には一箇所ボーン!と柱が立っています。
これは演者の方が、視界がほとんど無い能面をつけた状態でも自分の位置を把握できるように立てられているんです。
その柱が大きなポイントで、中正面のチケットが他のゾーンと比べて安いのはこの柱に一部視界をさえぎられてしまうから。
でも中正面は立体的に舞台が見えるので個人的には好きなのですけど。
基本的にはどの座席でも充分楽しめると思います♪お好みとご予算に合わせて選んでみて下さいね。
色々と心配な人におススメの席
「見ている途中でトイレに行きたくなるかも…」
「何か邪魔しちゃったらいけないかな…」など、
不安な人はできるだけ後方の席や二階席での鑑賞をおススメします♪
後方の席(出入り口に近い席)にすると、とっさの時に他の方へご迷惑をお掛けせずにロビーへ出やすいです。また、二階席は比較的空いていたり学生さんが多い場合があるので、気を楽にして鑑賞しやすいと思います♪
何を着て行けば?
気をつけたいポイント(3つ)
具体例
- 光
舞台上の光を反射して光りそうな髪飾りやイヤリング - 音
鈴などの音が鳴るチャーム - 肩から上
※後ろの座席の方の視界を邪魔しないようにするため。
大きな髪飾り・帽子を着用したままの鑑賞 - そのほか
強い香水の匂い
服装!そう!これが一番の悩みの種かと!
まず、着物やスーツのような正装はしなくてもカジュアルな服装でOKです♪
服装についての明確なルールづけはありませんが私が思うポイントは3つ!
光!音!肩から上!
これらに気をつければ恐れるものは何も無いです。
どのような服装であれ、鑑賞中に他の方々のご迷惑にならない装いであることが最も重要だと思います。
有難いことに私が実際に遭遇したことがあるのは鈴をつけた方くらいですが、人づてに聞いたりネット上で見かけたりした内容を盛り込んで列記させていただきました。
「追善会」での服の色には配慮を
上記とは性質が異なる注意点ですが、「追善」と書かれている会はご供養が目的の会なので、暗めの色を選んで着て行かれた方が良いと思います。
舞台鑑賞時のマナーなどは?
全ての考え方の基本(シンプル)
具体的な例
- 知識や感想の共有は上演時間外に
- 舞台上の演者を追って“前のめり”に注意
- クシャミやセキはひかえめに
- 客席での飲食は基本NG
- 携帯・スマホをマナーモード!できれば電源OFF!
- 撮影・録音禁止
《他の人の視界・耳の邪魔をしない》
結局のところ、服装やマナーなどの根本的な原理はここに帰結すると思います。
通常、能楽堂やホールに「個室席」は無いので、完全に他の人の視界や聞こえる範囲から消えるなんて不可能です。
「できるだけ気をつけよう」と心に留めておくだけで、自分自身も周りの方々も安心して鑑賞ができる空間になるはずです。
知識や感想の共有は上演時間外に
誰かと一緒に舞台を見る場合、面白さから思わずその場で感想を相手に伝えたくなったりすることがあるかも知れません。
また、事前に調べてきた知識をガイドのように相手に教えてあげたくなってしまったり。
でもそれは上演が終わるまでガマン、ガマンです。
■ こんなこともあります ■
私語といえば、謡のお稽古をされている方が舞台の演者の方に合わせて小さい声で謡っていたり、お囃子のお稽古をされている方が同じく指をトントンと音を立ててリズムを取っていたりする場面に何度も遭遇したことがあります。
お稽古されている方にとって舞台鑑賞は「勉強の場」という側面もありますので、お稽古人口がとても多く、客席もそういった方が大半であった頃は誰も気にしなかったのかも知れません。
けれど、現在は状況も変わっていますのでお控えいただけると有難いなぁと思うばかりです。
“舞台上の演者を追って前のめり”に注意
舞台上の演者の動きを追って前のめりに体を右へ左へと動かす方にたびたび遭遇します。
ついつい…といった感じだと思いますが、これをなさる方の後ろの席になると本当に大変です。イス席の場合は背もたれにきちんと背中をつけてまっすぐな姿勢を保っていただければ、みんなでストレスなく鑑賞ができます。
クシャミやセキはひかえめに
生理現象ですから一切しないというのは不可能ですが、ちょっとした配慮をするだけで気持ちよく鑑賞ができる環境づくりになります。
■ ひかえめなセキやクシャミって? ■
例えば、すごく好きな人と一緒に食事している時に目の前で大きなあくびをしそうになったら…。
そう、ちょっと可愛く口元を隠したりしてパワーダウンを図りますよね?その心持ちです!
客席での飲食は基本NG
上演中かどうかに関係なく、ごくわずかな例外を除いてどの能楽堂でも客席(能楽堂では「見所」といいます)での飲食は基本的に禁止されています。
その目的は様々だと思いますが、客席をできるだけ長くきれいに保つことはその中でも大きなもののひとつだと思います。
それを踏まえた上で、「“食事”ではないのだからこれくらいならいいだろう」とお茶やアメを上演中に口にする方を時々見かけます。お茶は万が一こぼしてしまった場合のこともありますから、水分補給は上演前に済ませておくべきだと思います。
アメには思わぬ落とし穴
では、アメについては?なのですが、ポイッと口に入れるだけですから「飲食禁止!」と騒ぐようなものではないかな、とも思うのですが(クッキーなどのように屑も落ちませんし)問題なのはガサガサ音。
ビニールの袋を探ってガサガサ、ガサガサ…
個包装袋を開けるのにパリパリ…
なかなかに長く耳についてくる音なんです。
喉がお辛いのかも知れないけれど、できれば事前にパッと口に入れられるようにしてくれていたらいいのになぁ~。。なんて思います。
アメについて熱く語ってしまいましたが、それ以前にそもそも「飲食禁止」となっていることを忘れてはいけませんよね。
携帯・スマホをマナーモード!できれば電源OFF!
これは今の能楽堂で本当に問題になっています。
携帯・スマホは鑑賞する側だけではなく、舞台上の演者の方々にも多大な迷惑を掛けてしまう事態を招く可能性があるので私もよくよく気を付けるようにしています。
音の問題
ついうっかりで上演中に“ピピピピピピ~♪パラポロピレ~♪”
罰則はありませんが、会場全体の空気は一気に凍りつきます…。
マナーモードの場合もバイブレーションがONになっていると、これも着信があった際に近隣の座席の方にしっかりと振動音が届いてしまいます。
上演中は舞台に集中して電源OFFが最適ではないかと思います。
光の問題
能楽堂の客席は上演中暗くなる場合がほとんどです。
映画館でのマナーのお話にもたびたび目にしますが、暗い場所で光るディスプレイが周りの方の迷惑になる場合があります。
撮影・録音禁止
肖像権などの関係でこれは明確にルール化されています。パンフレットに明記されている公演がほとんどではないでしょうか(もちろん、パンフレットに書かれていなくても禁止です)。
ただし、web上の宣伝などを目的に撮影タイムを設ける公演も出てきました。また、開演前や休憩時間などの上演中以外の時間に能舞台を撮影することについては特に問題はありません。
また、主催者からの依頼で正式に撮影された舞台写真をご自身のウェブサイトなどで公開されている能楽師の方もたくさんいらっしゃいますのでぜひチェックを。
拍手ってしていいの?
私が今まで能楽鑑賞をした経験からすると、特に「拍手はご遠慮ください」とアナウンスされていない公演については曲が終わって演者の方が舞台袖へ戻るタイミングで拍手が起こっています。
いわゆる「拍手が起こるタイミング」では、必ずいずこかから拍手が起こって”パチパチパチ~!”となりますのでそれを確認してから一緒になって拍手するのが安心だと思います。
※2019.2.25追記※
「拍手をしない」という選択肢があります。
拍手について心配な方は「拍手をしない」という選択肢があります。
拍手は大体の公演で好意的に捉えられていると思いますが、曲によっては「静かに余韻を味わえない」などの理由で好ましくないとされる場合があります。<ソンナノワカラナイヨー!
その点、能鑑賞では「無拍手」は万能で、拍手をしないということは能鑑賞では全く失礼になりません。
全員が舞台から退場するまで空気を保とう、集中して観よう、などの前向きな姿勢として受け取られます。
思わぬ落とし穴?!これは気をつけたほうがいいかも。
トイレの数がとても少ない場合があります。
わずか10分程度の休憩時間にトイレ前にズラーッと行列という光景、多くの能楽堂でおなじみではないでしょうか。
トイレについては特に女性の方は開演前にしっかり済ませること、水分補給量に要注意だと思います。
食堂や食品を取り扱う売店を併設している能楽堂は希少です。
早めに食事を済ませてから会場入りする、ロビーの休憩所(これも座れるイスの数に限りが…)で食べられるよう持ち込みをするなど工夫を。
お役立ちリンク
能楽協会
多くの能楽師の方が所属している組織です。所属能楽師の方のプロフィール、お稽古場情報、公演情報、能楽辞典などが掲載されています。
the能ドットコム
能のあらすじや現代語訳、舞台写真など多数掲載して下さっています。
また、能楽師の方々へのインタビュー記事なども掲載されています。
柳の下
有志の皆様で能楽公演情報を投稿し集約するページを擁しているサイトです。私も時々公演情報を投稿させていただいています。